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35. Ice Fishing

先日のサーモンフィッシングの恨みを晴らすべく,サイマー湖でアイスフィッシングにチャレンジすることになりました.先日のラップランド旅行でもチャレンジしようと試みたのですが,マイナス20度から30度という極寒の中では,とても不可能だということで断念していました.ちょうどその日は気温が1,2度まで上昇し,風もそれほど強くなく,絶好の釣り日和となりました.先日までに積もった雪も路面では融け始め,車を運転するには冷や汗ものですが,釣りとなると絶好の条件です.アイスフィッシングのベストシーズンは3,4月頃だそうなのですが,そうなると今度は湖の氷も融け始め,ポイントを熟知していないと誤って湖に落ちてしまうという事故もあります.一度落ちてしまうと厚着した服が水を吸い,しかも氷が滑るため,なかなか上には上がれません.毎年,この種の事故で何人も亡くなっているそうです.ですから,アイスフィッシングをする人は首からアイスピックのようなものをぶら下げ,万が一,湖に落ちた場合はそれを氷に打ち付けて這い上がるのだそうです.先日もテレビでその道具の使い方を説明していました.

さて,今回は冬の真っ只中ということで,そのような事故もまず心配ありません.春先に散歩をしていた大学近くのハーバーから徒歩で湖の上を歩いていきました.凍った湖といっても,もちろん氷の上ではなく,15cmほど雪が積もったところを歩きます.新雪の上は足がとられて大変なので,友人の歩いた足跡の上を歩いていたのですが,歩幅が随分違い(彼の身長は2mもあります),なんだかみっともない歩き方になってしまいました.それはともかく,アイスフィッシングというのは私も始めての経験です.子供の頃から釣りが好きで,池,海などで主に楽しんでいたのですが,大体,魚の居そうなところというのは似ていて,それらしいポイントを探すことから釣りは始まります.ところが,真っ白な雪原でどうやってそのポイントを探すのか皆目見当もつきません.友人に聞いてみると適当だ,ということでした.なるほど,そうでしょうね.目印がありませんから.基本は,適当なところに穴を掘り,そこで試してみて,また適当なところに穴を掘り,というのを繰り返すことなのだそうです.穴はドリルのようなもので簡単に開けることができました(友人は).氷の厚さは大体3,40cmといったところでしょうか.穴の直径は狙っている魚の種類にも依るのですが,10-18cmくらいのようです.
 
 

氷に穴を開ける友人
10秒ほどでいとも簡単に開ける
穴開けにチャレンジする著者
友人ほどには簡単にはいかない.途中で休憩.
 

穴が開けば,あとは餌を付けた簡単な仕掛けを底まで落とし,底から10cmくらいのところで魚の当たりを待ちます.針の上にきらきら光る金属片のようなものがおもりになっており,同時に集魚効果も持っています.竿は20cmくらいのおもちゃのようなものでしたが,魚が釣れた場合には糸を手で手繰り寄せるようにして魚を釣り上げるので,それほど大がかりである必要はありません.餌は6,7mmほどの虫です.これを2,3匹ちょんがけするだけですから,簡単です.
 
 

針に餌をちょんがけする
餌.赤虫のようなもの
竿はいたって簡単な造り
あとは仕掛けを穴に落とし,当たりを待つだけ
 

ときどき,しゃくって魚の様子を伺いながら,魚の当たりをまっていると,まず私の仕掛けに魚がかかりました.興奮気味に上げてみると,5,6cmほどのはぜのような魚がかかっていました.「いつも俺ばかり写真に撮らないで,お前を撮ってやる」ということで,初の獲物と一緒に記念撮影となりましたが,後から友人に聞いてみると,私が釣った魚は外道中の外道だそうで,結局,鳥の餌になってしまいました.それじゃ,嬉しそうに記念撮影した私はあまりに格好悪いです.

結局,2時間ほどの間に,4,5箇所ほど場所を変えながら釣った獲物は,外道(何という魚だったか忘れてしまいました)が3匹,カマススズキの小さいものが6匹で,まずまずの釣果でした.小さいながらも,外道ではない魚は家に持ち帰り,友人がからあげのような方法で料理してくれました.白身で,味ははぜに似ており,なかなか美味でした.これで数が出ればなかなか楽しい釣りでは無いかと思います.もちろん,こうした小物だけでなく,場所によってはサーモンなども狙えるそうです.これで,先日のサーモンフィッシングの借りは返したぞ,と意気揚々の我々でした.

毎年,全国各地で釣り大会が開催され,優勝者は海外旅行とか車がもらえるとか.つまり,アイスフィッシングは冬のフィンランドの国民的娯楽なのでしょう.クロスカントリースキーといい,アイスフィッシングといい,フィンランドには長く寒く暗い冬を有意義に暮らすためのスポーツ,娯楽が非常に豊かなことをあらためて知りました.もちろん,これだけ豊かな自然があってこそ,というのは言うまでもありません.
 
 

釣りに熱中する友人
見るからに非常に地味な釣りである
彼が釣り上げたカマススズキの仲間
白身で味ははぜに似ている
右手の下に小さな外道をぶら下げて喜ぶ著者
外道ならそうと早く教えて欲しかった
著者が釣り上げたこの日一番の大物
外道だけではありません
 
 1/18/1999
(追記:1/20/1999)

・釣りのポイントはいくら適当に探すといっても,ある程度のルールはあります.例えば,底が緩やかな坂になっているところ(かけあがりと言ったりします)はポイントの第一候補です.ですから,ある程度,陸や島に近いところがポイントになります.ただし,魚の種類や季節によっては,深いところがポイントになったりします.いずれにしても基本は,釣り人が移動しながら適当なポイントを探す,ということです.

・釣った魚をカマスの仲間と書いてしまいましたが,間違っていました.フィンランド語でahven, 英語でperch,日本語でパーチ:スズキの仲間の食用淡水魚(研究社英和中辞典) でした.訂正いたします. 


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