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34. Lapland in Winter

フィンランド滞在中,最後のイヴェントとして家族揃って1週間のラップランド旅行に行ってきました.オーロラ観測,極寒体験,トナカイ,サンタクロース等々です.ラップランドのどこにするか,いろいろと考えましたが,サンタクロースに会うという条件を満たすもの,つまりロバニエミに日帰りで行けそうなところということで,今回はフィンランド北西部のスキーリゾートであるレヴィに決めました.レヴィはラップランドの数多いリゾート地でも有名なところで,しかもオーロラ帯にも入っていることから,オーロラ観測の確率も高く,まずまずの選択ではないでしょうか.

ホテル
泊まったホテルはFINAIRの機内誌KIITOSにも出ているSirkanta:htiです.このホテルには日本人女性が2人も働いており,日本からのツアー客の皆さんは彼女達のお世話になるようにプランされているようでした.我々はフィンランド国内からの個人旅行なので,彼女達には直接連絡が入っていなかったようでしたが,現地でのアウトドアアクティヴィティなどについて快く相談にのっていただけました.日本語で書かれたマニュアルも彼女達の製作のもので,ホテルフロントにも日本語で書かれた色々な情報があり,日本人観光客に対する驚くほどの心配りに驚きました.フィンランド語はもちろん英語もあまり得意でない方々が日本からいきなりラップランドに入っても,これならば十分楽しめると思います.実際,日本からヘルシンキに入る便はラップランド(Kittila)への国内便との接続が良く,その日のうちにラップランドに入ることができます.

サンタクロースに会う
レヴィに到着して今回の旅行の計画を立てた後,目的の一つであるサンタクロースに会いにロバニエミに行ってきました.レヴィからロバニエミまでは高速バスが2時間30分程で繋いでいます.朝7時頃,ホテルの前をバスで出発し,9時30分にロバニエミのバスターミナルに到着.まずは昨年オープンしたサンタパークを目指すことにしました.バスターミナルでどのように行くのか聞いてみると,まずはサンタクロース村に行き,そこから送迎バスが出ているとのことでした.バスターミナルから約30分,空港の方に向かったところにサンタクロース村がありました.クリスマスシーズンが終わったためか,人影もまばら.それでも,思ったよりは立派な「村」に感心していました.この辺りがちょうど北極圏の境界で,雪に埋もれたそれらしい看板を発見しました(写真1).

この日は天気も良く,気温もマイナス18度くらいまで下がっていました.外でのんびりという感じでもないので,早速サンタクロースオフィスなるところに行くと,そこも人影はまばらです.話に聞いたところでは,サンタクロースは奥まったところに鎮座していらっしゃり,観光客が行列を作って彼に会いに行くのが通常とか.ようやく会えたサンタクロースとデジタルカメラで写真を撮り,その場で写真がいただけるというシステムなのだそうです.我々が家族3人でオフィスをうろうろしていると,どこからともなくお兄さんが近づいてきて "You want to see Santa Claus?"と聞いてきました.そうだと答えると"He is just walking around. You can see him."と言うではないですか.隣のサンタ郵便局を覗いてみると,確かに暇そうに歩いているサンタクロースが居ました.これはチャンスとばかり,息子に彼にお礼を言ってこいとけしかけました.息子はクリスマスに彼からプレゼントを頂いているので,お礼を言う必用があったのです.そうこうしているうちに,サンタクロースも我々に気づき,息子に歩み寄ってきました.私はビデオを撮り,写真を撮りと忙しくしていましたが, 結局私も話の輪に加わり,最近の天気の様子(これから始めるのがいかにもですが),クリスマスは忙しかったかとか,昨年の夏は雨が多かったとか,日本人は多いかなどと,まあ大した話題でもありませんが,それなりにサンタクロースと会話を楽しむことができました.サンタクロースの写真やビデオは通常は勝手に撮れないそうなのですが(肖像権か何かの問題だそうで,そのような注意書きがありました),ちょうど彼も暇だったのか,快く記念撮影に応じて下さいました.

息子も彼にお礼が言えて満足そうにしており,そんな息子を見て我々両親も満足でした.驚いたのはサンタクロースが非常に大きいことです.おそらく2mはあるのではないでしょうか?フィンランドではそれほどめずらしくないのかもしれませんが.あと,息子が不思議に思ったのは,彼が息子にチョコレートをくれなかったこと.というのも,クリスマスシーズンにあちこちのスーパーマーケットに現れるサンタクロースはいつも息子にチョコレートをくれていたからです.「本物の」サンタクロースは息子に「サンタクロースシール」をくれました.ありがとうございました.

さて,サンタクロース村からバスに乗り,サンタパークへ行ってきました(写真2).地下に作られたちょっとした遊園地のようなところです.息子はともかく,家内も結構興味を持っていたらしく,家族連れにはちょうど良い場所かもしれません.といっても,ディズニーランドのような大型アミューズメントパークを想像すると失敗します.ささやかな雪の国の公園といった感じに近いと思います.内部にはメリーゴーランド(写真3)やパペットショー,小さなトロッコに乗って人形の国を巡る遊び (何と言えば良いのでしょうか?ディズニーランドにも似たようなものがあったと思いますが) 等々,一通り遊べます.シーズン中は行列が出来たほどの盛況ぶりだったそうですが,ここも待ち時間なしで遊べました.息子はメリーゴーランドがお気に入りで,係りのおねえさんに顔を覚えられるほど乗りまくりました.息子は良いのですが,つきそっていた私は少々恥ずかしかったですが.
 

写真1: 北極圏の入り口を示す看板
写真2:サンタパークの入り口
 
 
 
写真3: サンタパークのメリーゴーランド
写真4:ロバニエミで見かけたsnow taxi
 
 
スキー
レヴィですることと言えば,スキーかアウトドア・アクティビティ (とサウナと書いておかないと正確ではないかもしれませんが)ということになります.ホテルから歩いて5分のところにゲレンデがあり,スキーヤーが泣いて喜ぶ絶好の条件なのですが,3歳の息子がいること,私がそれほどスキーに熱心なわけでもないことから,スキー三昧というわけにもいきません.家内はスキーが好きなので,一日は家内がスキーで楽しみ,その間,父親と息子はそり遊びをすることになりました.なんでも,リフトはTバーというものらしく,日本ではあまり見かけないものだそうです.要するに,腰にそのバーを引っかけ,ゲレンデの上まで滑りながら引っ張って上がるという仕組みだそうです.家内も最初は苦労していたようですが,だんだん慣れて,最後にはそれ程目立った失敗も無くTバーリフトで上がって行きました.残された我々2人ですが,ゲレンデに設けられた「そり専用ゾーン」でそり遊びを満喫しました.ただ,そりを引いて上に登り,滑って降りていく息子の安全を気遣いながら,走って下りるのを繰り返していた私は,さすがに疲労困ぱいです.息子は満足そうでしたが.その日の気温はマイナス8度と,ラップランドにしては非常に暖かく,スキー日和だったのでしょう.随分スキーヤーが少ないなと思ったのですが(リフト待ち時間は0でした),それでもその日は多かったのです.後日,今度は私がスキーをすることになり,ゲレンデに行ったときはほとんどスキーヤーを見かけませんでした.天候は快晴.つまり非常に寒いのです.気温はマイナス31度.1時間ほど滑っていると,鼻毛は凍り,顔の周りの感覚は失われてきます.スキーレンタルショップの店員に聞いてみると,さすがにフィンランド人でもこの温度では寒く感じるとのこと.そうでしょう.ツアー客用にアレンジされているアウトドア・アクティビティもあまりの寒さにキャンセルされているようでした.それでも,日本では経験できないような極寒の世界を,この身をもって体感できたことは,貴重な経験でした.もちろん,ホテルの部屋に備え付けのプライベートサウナがなければ,こんな余裕の発言もなかったかもしれませんが.
 

トナカイサファリ
冬のラップランドでは観光客向けのアウトドア・アクティビティをアレンジする会社が数多くあります.数時間の体験ツアー的なものから7日間森で泊り込みのような恐ろしいものまで様々なものが用意されています.人気があるのはスノーモービルサファリ,ハスキー犬サファリ,トナカイサファリなどでしょうか.我々はトナカイサファリに参加してきました.そもそもトナカイは放牧されていて,それほど人に慣れていないそうで,そりを引かせるトナカイはそれ専用としてトナカイ牧場に囲われているのだそうです.我々が参加したツアーでは,まずトナカイ牧場に向かい,そこで防寒具を借り(我々は借りなくても大丈夫でした),2,3人づつトナカイの引くそりに乗って6kmのコースを一周するというものです.コースは凍り付いた湖の上から始まり,森を抜け,再び出発地点に戻ってくるものですが,天気がよかったせいもあり,この時期(カーモスといって,太陽が登らない時期)のラップランド特有の地平線に広がる茜色を楽しむ事ができました(写真5,6参照).トナカイはこのコースを覚えていて,スタートの合図とともに誰に指図されることもなく,すたすた小走りでコースを進んでいきます.さすがに天気が良いためマイナス20度と冷え込んで,まつげなどは凍りつきましたが,神秘的な景観に見とれていました. トナカイ牧場主はサーメ人の民族衣装を着ていましたが,実際にはサーメ人ではないそうです.遠くからきた観光客へのサービスなのでしょう.
 

写真5: トナカイサファリ
写真6:茜色の地平線は神秘的でさえある
 
 オーロラ
今回の最大の目的は何といってもオーロラを見ることでした.7日間の滞在期間中,一日くらいは見えるだろうと安心していました.この時期の平均観測確率は3日に1回とのことですから,7日間に2回は見えるという計算になります.ところが,ここに到着した頃はちょうど低気圧が停滞しており,気温もマイナス4度くらいと,オーロラは絶望的な天候でした.3日目くらいから高気圧が張り出し,天候も回復し,まさにオーロラ観測の絶好のチャンスが訪れていたのですが,オーロラ観測のポイントを誤ってしまい(ホテルから見えるものと誤解していました),せっかくのチャンスを逃してしまいました.残り3日となり,これはいよいよ怪しいぞと不安になり,毎夜,ホテルのレセプションで教えてもらったポイントへ出かけてはみるものの,なかなかオーロラに遭遇できません.雲の上でぼんやりと光るのが見えたり,ほとんど消えかけの残骸が見えたりと,不安はつのるばかりでした.あと2日となった夜,空は快晴,今夜を逃すともうだめだという,ほとんど背水の陣で望んだ日,ようやくオーロラに遭遇できました.最初は東西にアーチのようにかかっていたのですが,それが次第に形を変え,折り曲がり,カーテンのような形状へと変化していきました.色は明るい青緑といったところでしょうか.その夜遅く,再度見に来たときには,非常に大きなオーロラが出ており,何個所かでカーテン状になっていました.オーロラを見た感想は....見ることができてほっとした,というのが正直なところです.なんとも,貧乏性な発言ですが.地元の人に聞いてみると,「あっそう,昨晩出てた.よかったね.」ぐらいの非常にライトな反応です.まあ,そうでしょう.こんな寒い中,出るかどうかもわからないオーロラを暗い森の中で待っているのは,日本人ばかりでしたから.といっても,見る価値はあります.見れるかどうかわからない,というのもなかなか良いですね.見たから言えるのですが.残念ながら写真を撮るのはあきらめました.三脚がなかったのと,やはり機械式シャッターのカメラ(+レリーズ)が必要なようです.何といっても高感度センサーといえば我々の網膜に優るものはないでしょう.あとは我々の記憶の中でオーロラが美化され,語り継がれることでしょう.ちなみに,ソダンキュラ地球物理観測所で撮影されたオーロラの写真をこちらで見ることができます.あと,オーロラのHPとして有名な井出昌彦さんのページも大変参考になります.
 
 1/14/1999

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