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8. Graduation Party

5月30日(土)は高校の卒業式で,地元の新聞にも卒業生の名前が載るほど,おめでたい日でした.なにしろ,高校を卒業すればあの白い帽子を手にすることができるのですから.そう言えば,街のデパートにも白い帽子をかぶったマネキン人形が置いてあって,いかにもお祝いムードでした.

研究室のボスであり,私を招致してくれたParkkinen教授の御子息もその日高校を卒業されるということで,研究室のスタッフにパーティー招待のメールが届きました.

話には聞いていましたが,フィンランドでは何かめでたいことがあると,コーヒーパーティーを開くらしく,この日も「卒業コーヒー」なるものに招待されました.メールによれば,午後2時からとありますが,ここは念のため,同じく招待されたフィンランド人に「こうした場合,きっちり2時に行けばいいものか,それとも少し遅れるのが礼儀なのか」と聞いたところ,「そんな複雑な慣習は無く,言われた通りに2時から5時の間の適当な時間に行けば良い」と言われました.気の使いすぎには気をつけなければなりません.

Parkkinen先生にはぜひ家族同伴で来て欲しいと言われていたので,家内にこのパーティーのことを告げると,家内は早速自分の服の心配をし始めました.私は「コーヒーパーティーというくらいだから,カジュアルな種類のパーティーなので,服なんか適当でいいんじゃないか」と言ったのですが,やはり女心としてある程度の服装は身につけておきたいとのことでした.それよりも,手ぶらで行くのはやはりまずいだろう,ということになり,何を持っていくのが適当か相談しました.ああでもない,こうでもないと言っているうちに,家内がデパートのマネキンがバラの花を持っていたことを思い出しました.しかし,そのマネキンは女性で,息子さんにもバラの花でいいものかどうかわかりませんでした.いずれにせよ,花屋に行けば何かわかるだろう,ということになりました.

当日,パーティーに行く前に早速花屋に寄って,「graduation partyに招待されたのだが,その場合,何か持っていくのだろうか?」と尋ねてみました.やはり,バラの花を持っていくらしいことが判明し,通常は一輪持っていくということまで分かりました.なるほど,やはりそうだったか,と内心に勝利感を感じつつ,家族揃って会場まで向かいました.行く途中にも,家の庭先でなにやらパーティーを開いているのが見えました.が,どうもみんな服装が立派です.我々は私の判断によって全くのカジュアルな服装でした.が,後の祭りです.

家についてドアベルを鳴らすと,息子さんが迎えてくれました.頭には例の白い帽子です.我々がおめでとうと声をかけ,握手をしているうちに,御両親がシャンパンを持って出迎えてくれました.玄関でまず,乾杯をするのが風習のようです.乾杯が終わるとおもむろにリビングルームに通され,すでに来ているお客さんに我々が紹介されました.やはりみんな立派な格好です.どうやら,親戚の方も遠くはヘルシンキからわざわざいらしているようです.ちょっと恥ずかしさも感じましたが,まあ遠い日本から着いたばかりで,そこは御愛敬ということで服装のことは忘れることにしました.

次から次へとお客さんが到着すると,その度に息子さんが出迎え,握手を交わし,御両親がシャンパンで乾杯していました.これでは主催者も大変です.相当,お酒に強くないとお客さんを迎えているうちに酔っ払ってしまいます.ふと,なぜ息子さんがシャンパンを飲めるのだろう,と疑問に思いました.息子さんは18歳のはずで,日本じゃアルコールは20歳からのはず.シャンパンは特別18歳なのだろうか?と色々疑問に思いました.聞いてみると,18歳がアルコール解禁とのことでした.このパーティーの主役でもある息子さんの社交会デヴューをお祝いしているような雰囲気でもあり,アルコール解禁というのは大人になった証のようなものです.それに例の白い帽子.リビングルームでは親戚の方々が談笑し,テラスでは我々大学関係者がわいわいやっていました.御両親はせっせとその間をまわり,写真をとり,コーヒーを薦め(アルコールは最初のシャンパンだけでした.やはりコーヒーパーティーだった,ということです),忙しそうにしています.主役の息子さんも最初は御両親についてまわっていましたが,何時の間にか自分の部屋に友人とこもっていました.

息子さんの社交界へのデヴューは息子さん自身にとっては退屈なものだったのかもしれません.が,御両親の晴れ晴れしいお顔は,パーティーを一層なごやかなものにしていました.我々家族も,素敵なフィンランドの家を拝見できたのと,おいしいオードブルを堪能でき,本当に楽しい時間を過ごすことができました.

6/2/1998

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