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視覚技術グループ

視覚技術
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人の視覚のように,そして人の視覚を越えて - 視覚を技術する
 

 巷に溢れるディジタルカメラやスマートフォンなどの映像メディアによって,私たちの生活は便利に,そして豊かになりました.しかしながら,それらの映像メディアでは映像情報を取り込み,符号化し,認識するという私たちの視覚機能には遠く及ばないことも事実です. このプロジェクトでは,視覚に関する基礎研究で得られた知見を「技術」として結晶させることを目的に,以下のような様々な問題について取り組んでいます.

 

機能性光源のための自動分光設計

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 LEDは,様々な照明スペクトルを持つものが存在し,それらを組み合わせることによって照明光スペクトルを自由に設計することが可能となっています.こうした特徴に着目し,特定の目的に合わせた機能を有する機能性光源が設計されています.従来の機能性光源は,設計したターゲットのみ使用可能でしたが,新たに実照射に基づくフレキシブルかつ迅速な自動照明設計システムを開発しました.これにより,照明設計までに要する時間を大幅に削減することが可能となり,60秒以下で目的の機能性光源を設計することが出来ます.上の画像は平均彩度と群間色差を最大・最小にしたときの例です.

 

機能性光源の設計

 

 

 私たちは視覚情報の中でもとりわけ色情報から非常に多くの判断を行っています.食品を例にとると,食品の鮮度や熟度,あるいは変質や品質の劣化を色から察知することができます.本研究室では,色の違いを強調することに特化した照明の波長特性を求め,LEDによる照明装置として実現する研究を行っています. 上の画像は目視検査工程を想定して,異物と食品の色の違いを強調するように設計した例です.設計したLED照明下(左画像はオンマウス)では蛍光灯下と比較して,食品中の異物(種や石)がはっきりと見分けることができます.

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カラーユニバーサルデザインと色弱模擬フィルタ

 教科書,防災マップ,案内標識など,視覚サインに色が多用されています.しかしながら日本人男性の約5%を占める色弱(色覚異常)者は特定の色の組合せの識別が困難であり,色彩による情報表示が必ずしも情報伝達効率を向上させるとは限りません.色覚特性の違いによらず,誰に対しても色の混同が生じない配色設計(カラーユニバーサルデザイン :CUD)が急務とされています.

 

 

 本研究室では,色弱者にとって混同しやすい色組合せを一般色覚者(正常色覚者)がリアルタイムに体感・発見できる分光フィルタを世界で初めて設計・実現しました.現在では,色弱模擬フィルタ「バリアントール」シリーズとして製品化され,民間企業や行政機関等における印刷物,公共サインや教科書等の配色チェック,学校環境の整備,教育・医療従事者の教育,CUD啓発セミナー等で広く利用されています.

 

[産学官連携研究]
・地域新生コンソーシアム研究開発事業(経済産業省)

[共同研究]
高知工科大学篠森敬三研究室 [外部リンク]
伊藤光学工業株式会社 [外部リンク]

[製品サイト]
・色弱模擬フィルタ「バリアントール」
 - オフィシャルサイト [外部リンク]
 - 英国販売代理店 [外部リンク]

[受賞・認証]
平成23年度科学技術分野の文部科 学大臣表彰科学技術賞(開発部門)受賞
第9回産学官連携功労者表彰 経済 産業大臣賞受賞
2007年度 グッドデザイン賞(新領域デザイン部門)受賞 [外部リンク]
財団法人 日本学校保 健会推奨用品認定 [外部リンク]
NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構「カラーユニバーサルデザイン・支援ツール」認定 [外部リンク]

 

分光情報による不可視情報の可視化

 日常生活の中で,ちょっとした色の違いを見分けるために目を凝らさなければならないという場面に遭遇した経験があると思います.このような僅かな色の違いは,物体の物理的・化学的構造に起因するスペクトル差の表れです.本研究室では,僅かなスペクトルの差を強調し,スペクトルが持つ情報を効率的に,最大限に引き出す研究を行っています.

 

 

 蛍光ペンなどで良く知られる蛍光は,実のところ食品・動植物・鉱石など様々な物質が有しており,その蛍光特性 は物質固有であることが知られています.そのため,この蛍光を観察することで物質の判別,定量を行うことができます.励起・蛍光マトリックスとは,照射する光を変化させつつ,そのときの分光情報を取得することで得られる2次元マトリックスです(左図).私たちはこうした蛍光情報を取り出す研究に取り組んでいます.

 

手の洗浄度の定量評価手法の開発

 

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 食品の加工現場では,食中毒や感染症を防ぐための手段として手の洗浄が重要視されています.しかし,厚生労働省の調べでは食中毒の患者が毎年2万人以上報告され,その死者の約73%が細菌によるものであることが報告されており,食中毒による被害を減らせていないのが現状です.このような被害を減少させるために手の洗浄度の評価方法が注目されていますが,現状では多くの検査時間が必要という問題があります.そこで私たちは,手に付着する”汚れ”の蛍光特性に着目し,高速かつ容易な手の洗浄度の評価および汚染分布イメージング手法を開発しました.これは,手に付着する”汚れ”から発せられる蛍光に着目し,その強度分布から手の汚染箇所を判定する手法です.これにより,手のひらの洗浄が十分に行われているかどうかの自動判別に成功しました.

 

最適励起・蛍光波長による冷凍魚の鮮度イメージング

 

 鮮度が落ちることにより変化する蛍光成分に着目し,励起・蛍光マトリックスを用いて冷凍魚の鮮度の推定を行いました.鮮度推定に最適な励起波長と蛍光波長の組み合わせを算出し,得られた最適な蛍光成分を用いて鮮度の可視化に成功しました.

 

[関連論文]

Gamal ElMasry, Naho Nakazawa, Emiko Okazaki, Shigeki Nakauchi (2016). Non-invasive sensing of freshness indices of frozen fish and fillets using pretreated excitation–emission matrices;, Sensors and Actuators B: Chemical, Vol. 228, No. 2, pp. 237-250, 2016. [外部リンク]

Gamal ElMasry, Hiroto Nagai, Keisuke Moria, Naho Nakazawa, Mizuki Tsuta, Junichi Sugiyama, Emiko Okazaki, Shigeki Nakauchi (2015). Freshness estimation of intact frozen fish using fluorescence spectroscopy and chemometrics of excitation-emission matrix;, Talanta, Vol. 143, No. 1, pp. 145-156, 2015. [外部リンク]

 

励起・蛍光マトリックスによる豚肉の菌数推定

 豚肉の菌の持つ蛍光成分を用いて菌数推定を行い,人の目では見ることのできない情報(菌数)の可視化に成功しました(右図).

 

[関連論文]

Ken Nishino, Kazuaki Nakamura, Mizuki Tsuta, Masatoshi Yoshimura, Junichi Sugiyama, and Shigeki Nakauchi. “Optimization of excitation–emission band-pass filter for visualization of viable bacteria distribution on the surface of pork meat”, Optics Express, Vol. 21, No. 10, pp. 12579-12591, 2013. [外部リンク]

 

近赤外分光法によるシャインマスカットの糖度推定

 

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 シャインマスカットは農研機構果樹研究所で開発された優良な白ブドウで,果実品質と栽培性に優れていることから,全国的に生産量が急増しています.一方で,果皮色が黄緑色であることから,外観で熟期を判断することが困難であり,現状では屈折糖度計による糖度計測により収穫時期を判断しています.しかし,これは果汁を用いるため破壊計測であり,摘粒や洗浄に時間がかかります.そこで本研究では,近赤外領域に糖度と関連のある吸収帯を見つけ出し,シャインマスカットの糖度推定を行いました.LEDとフォトダイオードを用いた実デバイスにおいても糖度を推定できることを確認し,房状という特殊な形状のため非破壊糖度計の導入が行われてこなかったブドウにおいても,果粒を透過させた光を計測することで糖度の非破壊計測が行える可能性を示しました.

 

近紫外分光画像法によるサンスクリーン(日焼け止め)防御指数の推定

 しみやしわなど肌に悪影響を及ぼす紫外線への対策としてサンスクリーン(日焼け止め)がよく用いられています.サンスクリーンの紫外線防御指数としてSPFが用いられ,製品を選ぶ目安となっています.SPFは,肌に直接紫外線を照射し日焼け具合から算出するため,被験者に負担がかかってしまいます.そこで,サンスクリーン塗布状態の反射光に着目し,反射率から透過率を推定するモデルを提案しました.これにより,SPFの推定だけでなく,上図に示すサンスクリーン防御能力,時間変化による防御能力変化の可視化に成功しました.

 

真珠品質の計測技術開発

 

 

 

 日本を代表する宝石である真珠の品質は,珠の大きさ・光沢感・干渉色の豊富さなどに主眼を置き,鑑定士によって目視で評価されています.こうした評価は,鑑定士の豊富な経験に基づいており,こうした評価を補助する共通の指標の 確立が求められています.そのなかでも,我々は計測が困難とされる光沢および干渉色に焦点をあて,真珠に関わる様々な機関と協働した真珠の計測技術開発および視覚機序に基づく真珠品質の数値化手法の確立およびその装置化に取り組んでいます.

 

[産学官連携研究]
・浜松オプトロニクスクラスター

[共同研究]
三重県水産研究所 [外部リンク]
・浜松メトリックス株式会社

[関連論文]
Toshihiro Toyota, Shigeki Nakauchi ,“Optical measurement of interference color of pearls and its relation to subjective quality;Journal Optical Review ,Volume 20,Issue 1,2013. [外部リンク]

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ファンデーションの定量・分布計測システムの開発

 

 

 ファンデーションは,肌に塗布することで肌の色調や質感をコントロールし,肌をより美しく見せることができます.このファンデーションを塗布したときの仕上がりの美しさには,顔のどの部位にどれだけファンデーションが塗布されているかという分布情報が重要となります.しかし,これまで分布を画像計測する方法が確立されておらず,局所的な光学特性計測や人の目による官能検査に頼っていました.そこで私たちは,株式会社カネボウ化粧品と共同で,ファンデーションを非破壊に,定量的に,分布計測するこれまでにない計測技術を開発しました.それが上の図に示す“ファンデー ションの定量・分布計測システム”です.ファンデーションと肌の分光特性の違いを強調出力するように設計された 光学フィルタによって,顔に塗布されたファンデーションの分布を画像として撮影することができます.このシステムを用いてファンデーションの仕上がりを評価したところ,同じ女性に対して塗布する場合でもメイクの専門家と一般女性では専門家が塗るほうが美しく仕上がり,そのときの分布状態は全く異なることが分かりました.今後,カウンセリングや美容テクニックの開発や製剤開発への応用が期待されます.

 

[共同研究]
・株式会社カネボウ化粧品スキンケア研究所

[関連論文]
Ken Nishino, Mutsuko Nakamura,Masayuki Matsumoto,Osamu Tanno,and Shigeki Nakauchi,Optical filter for highlighting spectral features Part I: design and development of the filter for discrimination of human skin with and without an application of cosmetic foundation. Optics Express Vol. 19,Iss. 7,pp. 6020-6030 (2011) [外部 リンク]
Ken Nishino ,Mutsuko Nakamura,Masayuki Matsumoto,Osamu Tanno,and Shigeki Nakauchi,Optical filter highlighting spectral features Part II: quantitative measurements of cosmetic foundation and assessment of their spatial distributions under realistic facial conditions. Optics Express Vol. 19,Iss. 7,pp. 6031-6041 (2011) [外 部リンク]

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近赤外スペクトルイメージングによるアレルギー性皮膚炎評価

 

 

 ヒトには見ることの出来ない近赤外の光には,私たちが気付くことのできない様々な情報が眠っています.その豊富な情報量と可能性に期待し,私たちは近赤外の隠れた情報を取り出す研究に日々取り組んでいます.その一例として上に示しますのが,アレルギー性皮膚炎の評価を行ったケースです.アレルギー性皮膚炎と一言にいってもその種類は様々ですが,表面の腫れや赤みだけでは鑑別が非常に難しく,診断には医師の経験が不可欠です.しかし私たちの調査によって,接触皮膚炎(図左,Type IV)と蕁麻疹反応(図右,Type I)の判別要素が近赤外光に存在する可能性が示唆されました.

 

[共同研究]
浜松医科大学 [外部リンク]

 

分光学的手法の応用による食品の品質評価

 

 

 

 食品の品質・おいしさは,含まれている成分が非常に大きく関わっていると言えます.例えば,塩味や甘味などの 味覚に直接関わる成分だけではなく,食感や舌触り,香りといった様々な性質も,含まれる成分の種類や量に大きく依存します.しかし,従来の理化学的な手法では,分析に関する知識や技術が必要で,薬品等の消耗品やも不可欠です.また,結果を得るまでに時間を要す,破壊検査であるという問題点もありました.本研究室では,成分特有の近赤外波長帯の光吸収 特性に着目し,光学的な計測により,簡易・迅速に,かつ非破壊で,食品に含まれている成分の分布を可視化し,品質評価へ応用する研究を行っています.上の動画は,透過特性を特別に設計した数枚の光学フィルタ画像から,牛肉の品質上最も重要な脂肪分と,柔らかく高品質な牛肉に多く含まれるオレイン酸の分布を可視化した例です.品質が高いとされる,オレイン酸が多く柔らかいとされるサンプルほど赤く,逆に少ないサンプルは青く表示されています.

 

[産学官連携研究]
・浜松オプトロニクスクラスター

[共同研究]
三重県畜産研究所 [外部 リンク]
住友電気工業株式会社 [外部リンク]

 

[関連論文]
Ken-ichi Kobayashi, Yasunori Matsui,Yosuke Maebuchi,Toshihiro Toyota and Shigeki Nakauchi,“Near infrared spectroscopy and hyperspectral imaging for prediction and visualisation of fat and fatty acid content in intact raw beef cuts”,Journal of Near Infrared Spectroscopy,Volume 18,Issue 5,2010. [外部リンク]
Ken-ichi Kobayashi, Masaaki Mori, Ken Nishino, Toshihiro Toyota and Shigeki Nakauchi,“Visualisation of fat and fatty acid distribution in beef using a set of filters based on near infrared spectroscopy”,Journal of Near Infrared Spectroscopy,Volume 20,Issue 5,2012. [外部リンク]

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